GridASP: はじめに
グリッドとは,安全に・安定して・安易に様々な情報サービスを享受できるようにするための技術であり,サービスのレベルで仮想化を実現しようとしている。「安全に」とはセキュリティ面での配慮があること,「安定して」は必要な情報資源(計算資源,記憶資源,ネットワーク資源など)が必要なだけ提供されるように仮想化されていること,「安易に」とはエンドユーザは特に端末の裏側で何が起きているか気にする必要なく情報サービスへのアクセスを可能とすることを指している。いわゆる情報サービスのユーティリティ化を目指したコンセプトである。これを実現するためには,情報資源が,異機種混合であっても,異なる組織に属していても,動的に連携できる仕組みが必要であり,グリッド技術の必要条件となっている。
グリッドは,科学技術の分野で始まり発展してきたものであり,その応用の多くは科学技術分野で実施されている。しかし,最近では,ビジネスの分野でも,コスト低減,システムの安定化など,グリッド技術の応用が進んできており,ビジネス分野での発展が期待されている。特に情報サービスのユーティリティ化は、ビジネス分野においてこそ最も期待される変革の一つである。
ビジネス分野で最も早くグリッド技術が導入されたのは、半導体、自動車、創薬などの分野における設計、解析、シミュレーションといったテクニカルコンピューティング業務である。この分野におけるITシステムのユーティリティ化は大きく分けて三段階で進むと考えられる。最初の段階は、事業所内または社内全体で計算機資源を仮想・統合化することであり、計算機の負荷を平準化することで稼働率を高めるとともにコスト削減を図ることができる。次の段階は組織内の計算機の運営・管理をアウトソースすることであり、コアの業務に専念して経営効率を上げることができる。この段階ではアウトソーシングの顧客毎にシステムが独立して組まれている。最後の段階がユーティリティ化である。利用者となる顧客のシステムが物理的に常に保持される訳ではなく、必要に応じて仮想的なシステムが構築される。利用者は使用した分だけ料金を支払う。
実際には、これらの段階は組み合わされて利用されるケースもある。例えば、日常的行う小規模な設計や解析は社内のシステムで実行し、頻度の少ない大規模な解析は外部のユーティリティサービスを利用することが考えられる。情報サービスのユーティリティは、企業においても様々な場面での利用が期待される。
以下では、ビジネス分野におけるテクニカルコンピューティングをユーティリティサービスとして実現するためのビジネスモデルGridASP^(TM)について述べる。
