GridASPの概要
GridASPは、アプリケーションの実行をユーティリティサービスとして提供するビジネスモデルである。
これまで、アプリケーションの実行を外部のリソースで実行するサービスとしてASP(Application Service Provider)があった。エンドユーザはブラウザによりアクセスし、実行したいアプリケーション、入力データを指定して、処理を依頼し、計算結果を受け取る。必要な時に必要なだけサービスを利用し、利用した分だけ料金を支払う。
既にサービスとしては行われているが、現時点でASPとして広く普及し利用されているビジネスは、グループウェア、メールサービスなど長期的かつ定常的に利用されるアプリケーションがほとんどである。テクニカル系のアプリケーションについてもASPは行われているが、アプリケーションを実行するためのノウハウをプロバイダが有していて、その提供を付加価値として行っているケースが多い。この場合、一つの会社が、特定のアプリケーションに対して計算処理を行うための計算機システムを用意し、エンドユーザに対する利用インタフェースとなるWebポータルを構築して運用する。
従来のASPでは以下の問題点があり、大規模な普及には至っていない。
- プロバイダは、ポータル、計算機、アプリ、全ての資源と環境を揃えなければビジネスがはじめられない。(ビジネス立ち上げへの障壁)
- ASPが用意したアプリケーションに対するエンドユーザからのリクエストが少ない場合、計算リソースは遊んでしまう。(計算リソースの低稼働率の可能性)
- 処理可能なジョブ数に限度があるため、許容量以上にエンドユーザからのリクエストが来た場合に、エンドユーザからの依頼が受けられなかったり、実行を待たせたりする。(ビジネスチャンスの喪失、サービス品質の低下)
- 製薬や金融の分野に代表されるように、どのような計算を行っているのかを知られたくない企業エンドユーザは多い。既存のシステムでは誰がどのような計算をしているかASP事業者には全てが見えてしまう。(エンドユーザプライバシーの露出)
そこで、GridASPとして、独立した三種類のエンティティが連携してアプリケーションの実行サービスを提供するビジネスモデルを提案する。すなわち、ポータルを運営し、ユーザ管理など利用者のフロントに立つポータル事業者(SP:Service Provider)、アプリケーションを用意しライセンスを管理するアプリケーション提供者(AP:Application Provider)、計算資源を用意し運用・管理するとともにジョブのリクエストを受けて実行するリソース提供者(RP:Resource Provider)の三つのエンティティから構成される(図1 GridASPの概念図)。
[GridASPの概念図]
このモデルにおいて、エンドユーザを含め、各エンティティは一つ必要であるが、複数存在することも可能である。また、各エンティティは他のエンティティの役割を兼ねることができる。このGridASPのモデルの場合、従来のASPに対していくつかの利点を生み出すことができる。
- 自分の得意な技能だけに特化してビジネスへの参画が可能である。
- 専門性を生かすことにより事業の経営効率を高めることができる。例えば、クラスタの運用に優れていれば、大規模に運用することで1台当たりの運用コストを他者に比べて低く抑えることができる。
- リソース提供者(RP)が、複数のポータル事業者(SP)と契約することにより、一方のポータル(アプリケーション)の要求が少ない場合でも、他のポータル(アプリケーション)の要求を受けることで、所有する資源を有効に活用できる。
- ポータル事業者(SP)が、複数のリソース提供者(RP)と契約することにより、一つの計算リソースの利用が一杯であっても、他のリソース提供者(RP)に要請することで、アプリケーションの実行を実施することができる。
- ポータル事業者(SP)はエンドユーザが誰であるかを認識する必要があるが、リソース提供者(RP)は認識の必要がない。一方、リソース提供者(RP)は何を計算するか知る必要があるが、ポータル事業者(SP)は知る必要がない。したがって、「誰」が「何」をの両方を知る事業者をなくすことができる。
- ポータル事業者(SP)は、複数のアプリケーション提供者(AP)が用意したアプリケーションの中から、特定のエンドユーザ向け(たとえば自動車業界向け等)にアプリケーションを特化して選ぶことにより、ポータルの付加価値を高めることができる。
- エンドユーザから見てリソース提供者(RP)の計算機は仮想化されている。すなわち、エンドユーザは自分のジョブがどの事業者により実施されるかを知らない。また、ジョブ終了後、関連するファイルはポータルに戻され、計算機上からすべて削除されるので、ファイルが第三者に漏洩する可能性を減らすことができる。
これらの利点から、GridASPのモデルは従来のASPに比べて、より低価格で安定したセキュアなアプリケーション実行サービスを提供することが可能である。
また、大学、研究所、企業における計算機センターでは、CPU使用量に従って課金されることが多いが、GridASPのモデルではアプリケーションの実行をサービスとして捉え、アプリケーションの実行結果を得るためにいくら払うか、という課金モデルになる。このサービス料金の中には、リソース提供者へのCPU利用代、アプリケーション提供者へのライセンス利用代、ポータル事業者の利益などが含まれる。
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