GridASPを用いた大規模シミュレーション
社内に計算機を有し、様々な計算処理を実行している企業の計算機ユーザは、製品開発や研究のとある段階において、社内のリソースでは充足しない、大規模な計算処理の実行や大量の計算処理を必要とすることがある。そのような処理の実行にGridASPによって提供される外部のリソースを利用することが考えられる。例えば、創薬企業におけるドラッグスクリーニングでは、多数の候補分子からの粗い解析による大まかな絞込みと、少数の候補分子からの精密な解析による詳細な絞込みの、段階を経る。自動車企業における新しい自動車のデザイン設計も同様である。多数のデザイン候補から絞り込むために、構造解析、流体解析、衝突解析などを行うが、候補が絞り込まれてくればより精密な解析が必要とされる。このような精密な分析を行うためには、一般的に大規模な計算処理となる。ピークの処理要求量に合わせて社内資源をあらかじめ用意しておくと、大規模な計算処理を必要としない通常の時期には、多数の資源が遊休状態となり、ハードウェアの固定費が経営効率を下げる結果となる。このような場合、社内に保有する計算資源量は、通常の時期の処理要求量に合わせた資源とし、処理可能な能力を超えた処理要求はGridASPによる外部リソースに処理を依頼することができる。
一方で、リソース提供者(RP)は、計算機資源を提供することに専念し、その運用コストの最小化を図ることが求められる。最も一般的な方法は、大規模なクラスタシステムを運用することである。必要となるハードウェアの導入コストをある程度単価を下げることが可能であるばかりでなく、システムを運用する人件費を大幅に削減することができる。例えば64ノードのクラスタ一つを運用するにも最低一人のSEは必要であるが、512ノードのクラスタを運用する場合、ノード数が8倍だからといって8人も必要ない。従って、ノード当たりの運用人件費を大幅削減でき、ひいてはユーザへの提供価格を大幅に引き下げ可能となる。
産総研では平成16年に総数3000CPUを超えるAISTスーパークラスタを導入した。Opteronプロセッサ(2GHz)を2個搭載したPC サーバ機1058ノードから成るP32クラスタ、Itanium2プロセッサ(1.3GHz)を4個搭載したPCサーバ機132ノードから成るM64クラスタ、およびXeonプロセッサ(3.06GHz)を2個搭載したPCサーバ機268ノードから成るF32クラスタから構成されている(図6)。これまでにP32クラスタシステムを用いて、約20000原子からなる巨大分子の電子状態計算に成功している。
企業ユーザが製品開発や研究開発のとある段階で精密な解析を行うためには多数のプロセッサを同時に使用する必要があるが、3000CPUはもとより 100CPUを超える規模のクラスタシステムを社内に導入・運用するのはそれほど容易なことではない。GridASPでは、社内に保有する計算機資源では実現できないような大規模な解析を、大規模なクラスタを運営可能なリソース提供者(RP)から、必要な期間だけ提供を受けて処理を実行することができる。利用した分の費用だけを支払う、ユーティリティサービスである。
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